「●●さんはどう思われますか?」←どうってなんだバカ
人々は知らず知らずのうちに、学力や趣味、性格でコミュニティを形成し、その閉じた世界の中で生きる。
家の扉を開けて繋がる世界は自分の住む見慣れた世界だし、数字4桁を入力して繋がる手のひらサイズの世界は、自分の選んだ情報の世界だ。
自分でひらけた世界に身を投じているつもりでも、実は閉じた世界で生きている。
大学生の時、僕は初めてそれを自覚した。
◆
大学生の時に、僕は思いがけず“ひらけた世界”に飛び込んだ。
その世界で出会った友達は、偏差値3くらいの男で、僕より10ほど年上だった。多分昔はまぁまぁ悪い奴だった。
ある時、雑談の流れで彼が「真面目な女の子や一般的な女の子は、殆ど全員色んな男とセックスしている。だって俺の周りがそうだもん。」と言っていて驚いた。
「そういう子もいる。」じゃない。「大体がそういう子だ。」なのである。
枕詞で「ギャルほど彼氏としかセックスしない。」が付いてきたのでショックで気絶しそうになった。
往復ビンタの復路がそんな重いことあんのかよ。
◆
「大半は違うが、そういう子もいる。」派だった僕は、幸運にも彼の倍の知能(偏差値6)を持ち合わせていたので、出せる限りの大きな声で「ち、ちげーー!!」と叫んだ。
それからは偏差値3と偏差値6が「絶対そうだ!」「絶対ちげーー!」の押し問答である。
その日の夜、家に帰って布団の中で、
(僕と同じエネルギーで、「一般的な女の子は、ほぼ全員色んな男とセックスしている。」とか言い出すのってすげぇなぁ…)
としみじみ思った。
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きっと僕が「そういう子もいるけど、多くはそうじゃない。」と思っているのと同じくらい、彼は大真面目に「ほぼ全員そうだ。」と思っていたんだよな。
どっちが正しいとかじゃなく、きっと二人とも正しい。ただ根本的に会話が成立しないだけ。
えっ?それとも何?もしかして僕が気付いてないだけ?彼が正しいの?
嘘だろう、もうあんな大きな声出ないや。
◆
僕は講演はじめ、色々な場へ足を運ぶ。
質疑応答の時間があると、いつも僕は「あぁ、ここは“ひらけた世界”なんだな。」と感じる。
質問をする勇気はとてつもなく立派である。
それは大前提としても、とにかくみんな、何を言っているのか分からない。
質問者は老若男女さまざまだが、9割くらいはまぁ何を言っているか分からない。
まず内容以前に、質問の仕方がよく分からない。
会話のキャッチボールで野茂ばりのトルネード投法。しかもそれで幼稚園児くらいの球速。
「質問→具体的な内容」という、入社2秒で学ぶ構成すら大抵出来ていない。
パッと思い出して2hの質疑応答の尺で3, 4人くらいしか出来ていないのだ。
◆
「云々かんぬん、なんたらかんたら、なんたらで、なんとかだと思いますが、なんちゃらはなんちゃらですよね。なので今回は、この件についての佐藤さんのご意見お聞きしたいです。」
どれだよ!!!!質問どれだよ!!全部?その長々と喋った小論文全部が質問か??
佐藤さん「私は、●●については〜〜」
すごっっ!!やっぱ佐藤さんすげぇな!!!
トルネード投法から飛び出る幼稚園児の球を、なんで160km/hくらいに見せられるの?名捕手?名捕手なの??もしかして学生時代に野球やってた??
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質問の仕方がよく分からないのはまだいい。一番タチ悪いのが「質問の仕方がヤバい」+「内容も自分の知識ひけらかしたいだけ」の奴だ。
「戦後日本は焼け野原であり、それから数十年で云々かんぬん、A社の買収例にもあったかと思いますが、なんたらかんたら、三ツ矢サイダーの炭酸はシュワシュワで云々、山田さんはどう思いますか?」
どうってなんだバカ。自分でも何言ってるか分かってねぇだろ。「どう」って。何が「どう」なんだよ。三ツ矢サイダーはうめぇよカス。
山田さん「そうですねぇ、私は〜〜(正々堂々とそれっぽく全然違う回答)」
すっっげーー!!めちゃくちゃ回答してそうだけど単純に講演内容なぞってるだけだ!スキル高すぎるなマジで。
質問者「(ウンウン頷きながら)ありがとうございました。」
ウンウンじゃねぇよ!絶対自分でも何言ってるか分かってなかっただろ。何が合点承知の助だ。山田さんに感謝しろよな。
。。。
「スマイルズの『自助論』なんかにもあったかとは思いますが、なんたらかんたら、つり革あるある、スマホ見ながらつり革掴もうとしたらつり革とつり革の間で虚空掴みがち、竹田さんは自助についてどうお考えですか?」
いや結局「自助についてどう思いますか?」じゃねぇか。自助論のくだり必要ねぇだろ。
あと、「あったかとは思いますが」←これやめろ。
なんでかしこは全員『自助論』読んでる設定なんだよ。勝手に思ってろ。自助論なんかスラム街のブックオフでしか流通してねぇから。
◆
もっと行き過ぎて、「そもそもどうした?」みたいなおじいちゃん。
あれはもう五周くらいまわって許せる。可愛い。全部許しちゃう。孫にめちゃくちゃ愛を注いでくれよな。約束だぞ。
(複数人登壇の場で)
「あの、きょ、今日は、田中さんは来られてますか?」
えっ?おいおいどうした?町内会じゃねぇぞ??
催し物?僕もしかして、町内会の催し物に来ちゃった??
登壇者「あっ、えぇっと、本日は田中は来てないですねぇ…。」
じいちゃん「あ、あぁ、そうですか。先週の日経新聞に載っていた田中さんの記事について質問があったんですけど、じゃあ大丈夫です。」
おいおいおい。マジかよ。どうした??羞恥心どこに置いてきたんだよ。アダムとイヴもリンゴ食い損だよ。
山内さん(田中さんの関係者)「田中の先週の記事と言えば●●の内容ですね。ありがとうございます。この記事はこういう内容で、こうこうこんなことを書いています。これは私どもの云々かんぬん」
う、うめぇ〜〜〜!!!質問無かったのに、記事の内容紹介して着地しちゃうの!?!?すごくない??おじいちゃんは?おじいちゃんどう、今の回答??すごくない???
う、うわぁ〜〜!!すげぇ興味なさそう!良いよ良いよ!孫可愛いもんな!分かる分かる!孫可愛いし、冷奴はサイコーにうまいよな!うんうん!分かる分かる!
◆
そんな感じで質疑応答の場に居合わせると、普通に質問されること・普通に回答されること、それがどれだけ恵まれていることだったのか再認識しちゃうんですよね。
長々と書いてしまいましたが、大体そんな感じですかね。皆さんはこの件についてどう思われますか?皆さんのご意見お聞きしたいです。よろしくお願いいたします。